ブラステック
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【読物】時には昔のフルートの話を。【Louis LotとAltus】

2020/07/19 06:53:34

伝説のフルート”ルイ・ロット”をご存知ですか?

 

こんにちは、こんばんは、ごきげんよう。Brasstek金沢の丸七です。

 

 

今お店ではフルートのフェアをやているのでフルートのお話をしてみます。

サックスとかトランペットとかではJAZZシーンにおいて「ヴィンテージ物」と呼ばれるオールドな楽器が高値で取引されています。

レコードで聴くような往年の巨匠たちが吹いていた時代のモノ、サウンドに憧れを持っている方々に特に強く支持され、現代を生きるプレヤーの欲望を支えています。

サックスやトランペットのヴィンテージ物は大体1930年代以降のものが多くなっています。

これはまさにJAZZの黄金期とかぶっています。クラシックの奏者でもヴィンテージの楽器を使われている方がいますがJAZZのヴィンテージ愛好家と比較するとなかり少数です。

ここにはヴィンテージ楽器の音程コントロールの難しさ、操作性の悪さが大きくあります。

JAZZはクラシック音楽のオーケストラと比較すると1バンドあたりの人数も多くないこともあったり演奏にフェイクなどを多く入れるせいか音程にそこまでシビアではありません。(少々語弊はありますが)

クラシック音楽となると厳格に音程の正確さが求められました。操作性に関してもクラシック音楽では決められた超絶な連符を間違い無くクリアしなければいけません。操作性の悪い古楽器は現在のクラシック音楽においては「浪漫のあるジャジャ馬」的存在であり古楽器に対するロマンに思いを馳せる猛者以外にはなかなか使いこなせない代物だったりもします。

ただフルートのヴィンテージとなると面白いことにクラシックのジャンルのヴィンテージ志向率が大きく上がります。

ジャズフルート人口が多くないことも要因としてありますがクラシック音楽の奏者の方がヴィンテージのフルートを愛しているように感じます。

オールドのヘインズなんかもよく聞きますがヴィンテージのフルートの代名詞は「ルイ・ロット」でしょう。

前置きが長くなりましたが今回はこのルイ・ロットについてのお話です。

 

 

ルイ・ロットのフルートのヴィンテージというのはサックスなどよりも時世を大きく遡ります。

ルイ・ロットはピカソなども住んでいたパリの芸術の街、マンモルトルに1855年に工房を開いたと言われています。

その後1950年ごろオーボエで有名なマリゴ社に九州されるまで5世代にわたり偉大なフルートを作り続けてきました。

様々な楽器を開発、研究してきたテオパルト・ベームが1847年に発表した通称ベーム式フルート。まだまだ改良の余地はあるものの現代のフルートの形に非常に近くなっております。

なぜ、古楽器が現代人の心を惹きつけて離さないのか。

それはどの楽器のにも言えることですが一番は「音色」です。

楽器の音色を大きく決めるのは楽器に使われている素材と楽器の設計です。

ルイ・ロットの音色は上品でやさしく、良い意味で物静かなフルートと評価されることが多いです。

その音色や時代背景、楽器のもつ物語に恋をしコレクターとなる方々も一定数存在します。

 

 

ルイロットが製造されていた当時は金属の精錬技術が現代ほど高く無くルイ・ロットのフルートに使われている銀の素材もたくさんの不純物が含まれていました。

しかしその不純物こそがルイ・ロットの秘密の鍵を握っていると言われています。

ルイ・ロットに使われている銀素材を分析すると銀の純度は約94.8%だったようで銀以外の含有物は銅やプラチナ、亜鉛、マンガン、中には有害物質とされる水銀、カドミウム、鉛などの物質も含まれていた様です。

人体に有害であることは当時の科学ではわからなかったのでしょう。

もちろん現在製造されているフルートに使われている銀のほとんどは安全で含有不純物のコントロールも行っていることでしょう。。

しかしそれど同時に今の銀は味気ないものになってしまっているかもしれません。

現在いろんなメーカーが独自の理念を持ってフルート製作を行っておりますが、そのほとんどのメーカーがルイ・ロットのフルートを少なからず参考にしていることと思います。

 

 

自然豊かな長野県、安曇野に工場を置くAltus(アルタス)。

こちらのメーカーでもルイ・ロットへの挑戦が行われています。

 

 

アルタスについてはこちらをご覧ください。

日本のフルートメーカー、Altusについて。

 

Altusの創業者の田中修一氏もルイ・ロットのフルートに恋をした一人です。

有名フルートメーカーでフルートを製造していたが自分の求める音を作りたいと独立。

今では銀の素材、アルタス独自のスケール、頭部管の設計にこだわって多くのモデルを制作していますがその中でも1本だけ、Altusでしか作れないモデルがあります。

それが『 AL 』です。

 

ALモデル 詳細はこちら

 

ALは田中氏を一歩、ルイ・ロットへ近づけたのです。

ルイ・ロットには使われている銀は前記したとおり多くの不純物を含有していました。

当時の銀には有害な金属も含まれていましたがそれらを除き限りなくルイ・ロットの時代の銀を再現するために研究を重ねました。

そうして出来上がったのがAg946_アルタスシルバーです。

このアルタスシルバーは特許を取得しておりAltus以外での使用はできません。

ALモデルでは素材の銀だけで無く製法もルイ・ロットを踏襲しています。

現在のフルートの管体は継ぎ目のないシームレスな管材を使用しています。

しかしルイ・ロットがフルートを作り始めた当時は銀のシームレス管材など当然作る技術などありませんでした。

そのため一枚の長い銀板を筒状に丸め溶接しつなげる巻き管製法をとっていました。

しかしこの巻き管は製作に技術と時間が多くかかり現在ではこの製法でフルートを制作しているメーカーは少ないです。

そんな手間隙なんて顧みずAltusは巻き管製法に挑んだのです。

頭部管のジョイント部リングが付いているのがその証です。

パワー不足や音程設定の違いで現代の音楽に馴染めずにいた伝説的フルートが今の音楽環境に対応したら。。。

そんな夢が少し叶いそうですね。

そんなこんなで多くのフルートメーカーが約2世紀前のフルートに敬意を示し、今なお愛し続けている今日この頃です。

 

 

前を向いて歩く。

それは大切なことです。

しかし積み上げてきた過去や文化を愛し、ときどき後ろを振り返ってみることも大切だと思います。

楽器も人生も同じですね。

 

 

それでは今日はこの辺で。。

 

 

今日のBlog Staff

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Natsuki Marushichi

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