はじめてのピアノ選び Vol.3 ~電子ピアノvsアコースティックピアノ~(一部更新)
こんにちは、 Piano Cloud の吉田です。
前回のアップから時間が経ちましたが、「はじめてのピアノ選び」まだまだ続きます。
今回は、電子ピアノとアコースティックピアノの違いについてお話します。
先日、当店で開催していた、「デジタルピアノフェア」のチラシにも記載しましたが、電子ピアノの魅力はと聞かれたら
- 組み立て式なのでどこにでも設置OK。
- 調律不要!
- ボリューム調整、ヘッドホンで音の心配無用。
- 重くないのでご家族での室内移動が可能。
- お手頃な価格帯。
と、たちどころにいくつも挙げることができ、これだけを読むとまさに完ぺきな楽器です。
実は、私、この会社に入る前、大阪で一人暮らしをしていた昭和59年に、ピアノが欲しくなり入社1年目の冬のボーナスと、貯金をもって初代 ヤマハ クラビノーバ pf-15
(当時22万円 88鍵盤、FM音源とピアノタッチが魅力)
を買い、6畳ひと間の薄暗いアパートでボリュームを絞ってこそこそ練習していました。
当時の私の生活環境に、これほど適合したピアノなく、YAMAHAさん、よくこんな素晴らしい楽器を作ってくれた!と感謝したものです。
そして、電子ピアノを買いにお見えになられるほとんどのお客様が口にされるのが、「いつまで続くかわからないから、先ずは電子ピアノで」というもの。
・・・・・はい、お気持ち、よくわかります。
そういう点から見ても、電子ピアノはすごく魅力的な楽器です。
鍵盤数はピアノと同じ88鍵盤
ペダルは3本あり、
最高級のグランドピアノからサンプリングした音は生々しく弾く強さによって強弱の表現が可能。
リビングにも、子ども部屋に置くこともでき、お父さんがテレビで阪神タイガースを応援している隣でもヘッドホンを使ってピアノの練習ができる。
そして、本体・スタンド・ヘッドホン・高低自在椅子までついて10万円を切る価格から。
利便性とコストパフォーマンスは満点です。
では、アコースティックピアノはどうか?
これは、『表現力』が最大の強みです。
ピアノという楽器は鍵盤を押さえれば誰でも正しい音程を出せますが、実は、『音色(ねいろ)』がありまして例えば、曲中のたった1小節、時には1音でもタッチを変えれば表情が全く違うフレーズになります。
自分を堂々と主張する音
不安でさまよう音
嬉しさがこみあげてくる音
絶望の音
コンクールの審査をされる先生と会話すると指が正確に動くことも、フレーズの抑揚も大切ですがそれと同じくらい、『音色』を審査しておられ、それこそ、曲によっては最初の1音で明暗を分けてしまうことも起こりえます。
そして、このような場合、電子ピアノでピアノの音色の使い分けを習得するのは、残念ながら極めて困難です。
また、電子ピアノでも音の強弱は出せますが、それがアコースティックピアノと一致しているかというと結構ずれています。
伝え方が難しいのですが、例えば、一つの鍵盤を1(ピアニシモ)から10(フォルテシモ)まで、10段階の強さで押さえるとします。
電子ピアノの3とアコースティックピアノの3で、その音量が一致していればいいのですが、これが違うんです。
特に小さい音、アコースティックピアノで1の強さの音を、同じタッチで電子ピアノで弾くと、音が出ない、ということがあります。
以前、電子ピアノからアコースティックピアノに買い替えにお見えになられたお客様。
とても、お上手だったので、
「こんなに上手だったら、電子ピアノで練習していると、さぞかし、不都合があったんじゃないですか?」
と尋ねますと
「はい、ありました。娘が練習していて、一つの音が抜けていたので、それを言ったら、いいの、先生のピアノでは音が出るから、とか言われて・・・」
つまり、電子ピアノで小さい音を出しても、その感覚で、ピアノに向かうと、
「その音はもっと抑えて」と指導されてしまうわけです。
あと、意外にご存知ないのが、鍵盤の重さ。
「ピアノのようにタッチが重い電子ピアノはどれですか?」
という質問をよくいただきますが、電子ピアノの鍵盤は重いんです。
特にヤマハの電子ピアノは重いです。
調律師が使う分銅、
70gです。これを鍵盤に乗せてみましょう。
ピアノだったら(画像はYUS5)
4mmくらい鍵盤が下がりますがヤマハの電子ピアノの場合は、(画像はCLP645)
ほら、ビクともしません。
ローランド(HP601)や
カシオ(GP500BP)は
下がります。
ただ、気をつけなければいけないのは、間違いなくヤマハは電子ピアノの鍵盤がピアノに比べて重いことは知っているはずです。
それでも、試行錯誤して、この重さが一番ピアノを弾いている感じに近い、という結論を出したのだと思われます。
物理的な重さと、五感で感じる重さは違うんですね。
この辺りは、是非、店頭で実際に弾き比べてお確かめください。
繰り返しますが、電子ピアノは魅力的な楽器です。
だから、日本中で支持され、ピアノを始める人たちの底辺を広げることに多大な貢献をしてきましたし、現在も貢献しています。
ただ、その反面、本来は Y(上達度)=X(時間)のグラフように、45度の角度で右肩上がりになっていくはずのピアノレッスンが電子ピアノで練習していると、音楽に表現を求められるようになる頃(早ければ1年もしないうちに)から上昇角度が緩くなってきて、その成長を妨げてしまうという“負の要素” があるということをご承知ください。
先日も調律師と電子ピアノを触りながら会話していたのですが、他にも発音のタイミングや、鍵盤の深さなど、微妙な差異がありそこで出た結論は電子ピアノはピアノの代わりになるものではなく、ある意味、『電子ピアノ』という、別の楽器ということです。
いえ、だから電子ピアノを買ってはいけないと申し上げるつもりはございません。
電子ピアノでは満足できない、成長にブレーキがかかる、というゾーンに入ったら、その時はアコースティックピアノに買い替えていただければいいのです(ここは笑っていただくところです)。
最初に申し上げたように、電子ピアノにしかない良さはいくつもあります。
お客様には個別の事情があり、目指すものが違い、優先順位もそれぞれです。
どうぞ、堂々と電子ピアノも選択してください。
長い文章にお付き合いいただきありがとうございます。
まだまだ、説明が不十分なところもあるかもしれませんが、
一方的にご案内するのはここまで。
この先は、お客様の年齢やレッスン歴、さらに環境や価値観など個別の事情をお聞かせいただきながら、とさせていただきます。
続きは、楽器センター富山 PianoCloud で。
お待ち申し上げます。
過去のBlogより(2020.7.10更新)
はじめてのピアノ選び Vol.2 ~ピアノ学習者の練習環境 ピティナ編~
はじめてのピアノ選び Vol.3 ~電子ピアノvsアコースティックピアノ~
タグ: grand piano, Roland, おすすめ, はじめて, はじめてのピアノ選び, アップライトピアノ, グランドピアノ, ピアノ, ピアノ選び, ヤマハ, 電子ピアノ