Repair
ピアノが生まれ変わるために
全国で買取られたピアノが全てのお店で同じように整備を受けるわけではありません。お店によっては外装だけを綺麗にして、内部の機構や弦、ハンマーなどは古いままで販売されている場合もあります。それは専門技術者がお店に在籍していないことが原因です。
当社では買い取らせていただいたピアノは卓越した技術を持った専門の技術者が、Piano Cloudのピアノ工房で再生するために必要な修理と、演奏に最適な調整を施して次の演奏者へお届けしています。ここでは実際の整備・調整の様子をご紹介いたします。
アップライトピアノの場合
◆ ペダル周辺の整備
まずピアノ底部の板を外し、ペダル周辺のフェルトとクロスを貼り替え、ペダルを磨きます。アップライトピアノはこのクロスがつぶれるとペダルの上下幅が大きくなり踏みにくくなるのでこの作業は大切です。
ペダルを取り付ける際、裏の皮も貼り替えます。多くの場合、この部分にはクロスが貼ってありますが、長年の使用によって潰れてしまうことがあります。一旦潰れてしまうと元に戻ることはありませんので、ペダルの感覚がずれたまま演奏することになってしまいます。当社では長くご利用いただくため潰れにくい鹿革を使用します。
◆キャスター周辺の整備
キャスターは最も錆びやすいパーツです。見た目の綺麗さとキャスターがスムーズに回転するように可能な限り錆を落とします。
◆外装の整備
外装は程度の差はありますが経年劣化によって全体に傷や汚れが広がっています。
これらの細かな表面の傷を、粒子の細かい研磨剤で磨いて艶を出します。
塗装部分が割れている場合はポリエステルで傷を埋めたあと、表面を薄く削って艶を出します。同時に細かな傷も磨き落として全体を綺麗に仕上げます。
◆バランスフロントピンの整備
鍵盤を支えているピンは長年の使用により汚れています。そのままにしておくと鍵盤がスムーズに動かないので、ドイツ製のバリストルオイルを使用して全てのピンを磨きあげます。その後カラ拭きをするのですが、この時にピンの表面にごく薄くオイルが残るようにすると長期に渡る防錆と潤滑の効果が期待できます。場合によってはピンを交換することもあります。
◆ハンマー整形
長期間にわたって演奏を続けているとハンマーに弦の跡が深く残ります。溝が残ったままでは正確に打弦できなくなり、音が荒くなってしまいます。こういった場合は表面をヤスリで削って溝を消し、コテで元の丸い形に整えます。
◆ハンマーレールフェルトの交換
ハンマーを受けるフェルトが潰れている場合があります。そのままだと弦とハンマーの距離が均一でなくなりタッチが不揃いになるので新しいフェルトに貼り替えます。
◆バットスプリングコードの交換
ハンマーには弾いた後に元の位置に戻すためのバネが付いていますが、このバネを支えるバットスプリングコードと呼ばれる糸が劣化して黄色く変色している場合があります。この糸をそのままにしておくと切れてしまうので全て新しい糸に貼り替えます。
◆ブッシングクロスの交換
鍵盤のピンを支えるクロスが虫食いなで劣化していた場合、ピンが緩んで正常に動作しません。劣化しているクロスは全て剥がして貼り替えます。
◆鍵盤の整備
白鍵が経年劣化のため変色・変形している場合、全て剥がして新しいパーツに貼り替えます。黄色っぽく変色して古く見えていた鍵盤も新品のように真っ白で新しい鍵盤に生まれ変わります。
◆マフラーの貼り替え
弱音ペダルを踏んだ時に動作する音を小さくするためのマフラーは、たいてい変色が進行しています。新しいマフラーに貼り替えます。
◆組み込みと調整
整備が終わった鍵盤機構部分を再度組み上げてから、タッチの調整を行います。鍵盤の高さ、深さ、ハンマーと弦の最接近距離等全ての工程をチェックします。
グランドピアノの場合
グランドピアノの弦は構造上、錆びやすい傾向にあります。錆びていなくても高い表現力が求められるため劣化が進行している場合は全ての弦を張り替えます。
弦交換の際には、チューニングピンとピンを受ける木部も全て交換します。古いピンを抜いた後で全ての穴をふさぎ、開け直し、新しいピンを打ち直します。
また貼り替えに使用する弦は、高級機種で採用されているドイツのレスロー社製の弦を使用しています。アップライトピアノと同様、グランドピアノでもハンマーを整形しますが、グランドピアノの調整はアップライトピアノよりもさらに複雑で高い精度が求められます。当店では経験豊かな技術者が入念に打弦機構、ダンパーの調整、全体のバランスなど全ての項目をチェックして、グランドピアノに求められる表現力を最大限に限り引き出す調整を行っています。
◆仕上がり
全ての工程を終え、専任技術者の手によって新品のような輝きを取り戻し、甦ったピアノが店頭に並びます。