トランペットの王様、Schilke(シルキー)ってどんなブランド?【2024.06.24更新】
トランペットのブランドといえばパッと思いつく有名なものはVincent Bach(ヴィンセント・バック)でしょう。
しかしそのBachと並びそれ以上とも称されるハイクオリティ、ハイパフォーマンスのブランドもあります。
その名もSchilke(シルキー)。
今回のブログではシルキーの魅力と歴史をご紹介いたします。
目次
シルキーってどんなブランド?
シルキーはアメリカのラグジュアリーな金管楽器ブランドです。
シルキーサウンドは、プロッフェショナルのブラスシーンで一時代を築いてきました。
精巧な作り、ハイポテンシャルな楽器の演奏性からプロのユーザーも非常に多く、トランペットの王様と呼ばれることもしばしば。
トランペットの王様と呼ばれる所以は、ひとつひとつの楽器を細部に至るまで徹底し作り上げていくシルキーの製造スタイルにあります。すべてのパーツを自社で丁寧に制作し、すべてが高いクオリティで仕上がっているんです。
そして、すべての楽器が「カスタムメイド」と呼ばれるほどの入念さで完成されています。
このように時間をかけてきた伝統によって、シルキーの独特の美しさ、構えた時のバランス、そして最も重要な優れたサウンドクオリティ。どれをとっても一流のトランペットです。
〜シルキー使用トランペット使用奏者〜
・津堅 直弘(ツケン ナオヒロ)
沖縄県出身。国立音楽大学卒業。
新星日本交響楽団(現東京フィル)、東京フィルハーモニー交響楽団を経て1978年にNHK交響楽団に入団。
NHK交響楽団トランペット首席奏者を32年間務める。
使用楽器:B♭管:B1 GP S22 GP / C管:S22C GP
・高橋 敦(タカハシ オサム)
富山県出身。洗足学園魚津短大を経て洗足学園音大卒業。
新星日本交響楽団(現東京フィル)を経て1999年に東京都交響楽団首席。
ソリストとして国内外のオーケストラや吹奏楽団と共演。
使用楽器:B♭管 SB4-OT GP / C管SC4-OT SP
・田中 敏雄(タナカ トシオ)
東京音楽大学卒業。
在学中に関西フィルハーモニー管弦楽団に入団。 同団を経て現在読売日本交響楽団トランペット奏者。
使用楽器:B♭管 SB4-OT SP / C管SC4-OT SP
・Marc Geujon(マーク・ギュージョン)
フランス出身。
パリ・オペラ座首席奏者、パリ国立高等音楽院教授を務める。
使用楽器:B♭管:SB4-MG / C管:SC4-MG
ビル・チェイス / ランディ・ブレッカー / マーヴィン・スタム / アドルフ・ハーセス / アルトゥーロ・サンドヴァル / ダスコ・ゴイコビッチ / ジョン・ファディス / ルー・ソロフ / アラン・ルビン / リック・バティスト / リン・ビビアーノ / ジョニーマリード / ディジー・ガレスピー / カナディアン・ブラスのメンバー
などなどトップレベルのミュージシャンが愛機として使用してきました。
シルキーの歴史
創業者はレノルド・シルキー。
シルキー創業者のレノルド・シルキーは、1910年6月30日 アメリカのウィスコンシン州生まれ。
8歳でコルネットを吹き始めました。
10代になる前に、フランク・ホルトン社の工場で楽器製造の基礎を学び、演奏する音楽家としての生活も始めます。
青年期のシルキーはベルギーのブリュッセル音楽院で1年間学んだ後、18歳でアメリカに戻りシカゴに移住。シカゴ大学とノースウェスタン大学で勉強を続けながら、プロとして活躍する日々を送りました。
幼い頃からホルトン工場で活躍し、さらに貿易学校で学んだ結果、彼は工具や金型の職人として熟練し、銃器や金管楽器の製作にも手を染めていました。
この間、シカゴ交響楽団の首席トランペット奏者であるエドワード・ルウェリンに師事し技術の向上にも努めました。
ベルギー滞在中、シルケは18世紀の楽器設計者であり音響科学者でもあったビクター・マヒヨン氏の音響学的な考えに触れることになります。
これがシルキーの作るトランペットの源流かもしれません。
シルキーは数値とコンタクトマイクとオシロスコープを使った測定により、さまざまな音を分析しました。
管の直径を調整したり、これらのポイントで幾何学的な配列への侵入をなくすことで、彼は全体のイントネーションを改善しました。
また、シルキーは金属学や音響に関する物理学も研究していました。
彼はさまざまな合金の実験を行い、金管楽器のさまざまな部分に異なる合金を使用した場合の吹奏感と音色への影響について理論を立て、検証を繰り返しました。
親しい仲であったでシカゴ交響楽団のトランペット奏者、エルデン・ベンジや、ヴィンセント・バック、エルンスト・クチュリエと同様、シルキーは機械加工と音の科学の知識を駆使して、市場に出回っている楽器への不満から自作の楽器を作り上げたのです。
シルキーの演奏の師匠であるエドワード・ルウェリンが1936年に亡くなり、1937年にシルキーはシカゴ交響楽団で演奏するようになりました。
エルデン・ベンジの退団に伴い、ついにシルキーは1938年に首席トランペット奏者へと上りつめました。
その後1951年に退任するまでオーケストラに在籍しました。
シルキーは、多方面に精力的に活動しながらも1982年9月5日、アリゾナで腎不全のため病に伏し72歳でこの世を去りました。
ブランド、シルキーの誕生 〜 ヤマハとの関係性 〜
シルキーはホルン奏者であるフィリップ・ファーカスとともに会社を設立し、それをシルキー・ミュージック・プロダクツ・インコーポレイテッドに発展させ1956年に単独経営となりました。
ついに名門ブランド、Schilkeの幕開けです。
1966年にはYAMAHAがシルキーを楽器製造におけるアドバイザーとして雇い、エルデン・ベンゲ、フィリップ・ファーカス、アーノルド・ジェイコブスなどの元同僚であり演奏仲間の協力のもと、ヤマハがアメリカ市場にマーケットを広げることを支援しました。
これが1982年にシルキーが他界するまで続いたヤマハとの関係の始まりです。
この技術提携があったおかげでYAMAHAのトランペットの設計開発の技術が革新的に向上し、現在のヤマハトランペットの原型を築けたのはシルキーの功績と言っても過言ではないでしょう。
ヤマハの初期のトランペットの殆どはSchilkeデザインの影響が強く、その関係が 解消されて20年経過した今でもヤマハのプロフェッショナル軽量トランペットはSchilkeの過去のモデルからの影響がはっきりと見てとれます。マウスピースに関してもシルキーの設計はヤマハマウスピースのベースとなっており、寸法や特徴の番号付けは今尚共通です。
現代のシルキーブランド
息子のレノルド・E・シルケと娘のジョアン・シルキーが会社のオーナーとなり、2002年10月にゲッツェン社のベテランであるアンドリュー・ナウマンに売却されるまで経営されていましたが、経営母体が変わってもシルキーブランドは存続。
シルキーが作り上げてきた伝統は今でも守られており技術の継承も確実に行われています。
プロフェッショナル市場向けにシルキーが設計した楽器とマウスピースの製造を続けられシルキーの楽器やマウスピースは国、年齢、プロアマ問わず非常に多くの金管楽器奏者に愛されております。
いかがでしたか?
昔から作られているものをただ継承していくのではなくシルキー自身が学問、研究、演奏技術、加工技術のイロハを網羅し、それらを楽器作り落とし込んだ結果が今のシルキーに生きているのです。
トランペット吹きであれば誰しも一度は憧れを抱く”シルキーブランド”。
吹いたことがない方はいつか吹いてみてください。
トランペットの世界観がわかるかもしれません。
スタッフおすすめ楽器
◆SB4-OT SP
ソロイストシリーズである、”SB4-OT SP”。
ソロイストシリーズの最大の特徴は、史上初となるスタンダードタイプのマウスパイプが採用され、それに伴いバルブケーシング、各抜差管も新設計されていることです。
華やかで豊かなシルキーサウンドに、新たな吹奏感と抵抗感が化学反応の如く融合した、まさに新しい結晶と言えるモデルになっています。
ソロイストシリーズには、「SB4-OT」「SC4-OT」があります。
オーケストラやソロ・室内楽等、ジャンルを問わず幅広くお使いいただけます。
このモデルは、東京交響楽団首席奏者である高橋敦氏、読売日本交響楽団・田中敏雄氏がシルキー社の製作スタッフとともにテストを重ねて完成させた、日本から世界へ発信するオリジナルモデルです。
◆i32-SP
iシリーズである、”i32-SP”。
iシリーズは、シルキー社の長い経験を活かし、より吹きやすさ、扱いやすさを追求して開発されました。
主な特徴は、新設計のマウスピースレシーバーやバルブケーシング、そしてベルデザインにあります。
「i32」のベルデザインには、「S32」や「B5」に採用されている♯2テーパーをもとに開発されています。ベルデザインを「i33」より1つ上のサイズにすることで「i32」は息の入りやすさが良く、抜けが良くなっています。シルキーのB♭管の多くはこの#2のベルテーパーを採用しています。
「i32」は、シルキートランペットらしい既存のモデルの良さを感じさせてくれる音色です。
◆i33-SP
iシリーズである、”i33-SP”。
iシリーズは、シルキー社の長い経験を活かし、より吹きやすさ、扱いやすさを追求して開発されました。
主な特徴は、新設計のマウスピースレシーバーやバルブケーシング、そしてベルデザインにあります。
「i33」のベルデザインには、「S33HD」や「S23HD」に採用されている#3テーパーをもとにした、イエローブラス製の#3テーパーを採用しています。
ベルテーパーを「i32」より1つサイズを落とした「i33」は小柄な日本人や女性でも鳴らしやすさ、音のまとまりやすさを実現しています。
また、「i32」に使用されている#2に比べ、#3テーパーはベルの開きが緩やかで、まとまりのある音が特徴で、初めての方にも扱いやすく、鳴らしやすいモデルです。
コントロールしやすいので、室内楽や吹奏楽など様々なジャンルに対応します。
ブラステック白山