【読み物】職人技が光る、トーンホールの技巧。
こんにちはBrasstek白山の丸七です。
今日はサックスのトーンホールについてのトリビアなお話です。
友達に知識自慢できる様になるのでよかったら読んでみてください。
<目次>
1_トーンホールって何?
トーンホールってなに?って話ですが日本語で言うと「音孔」という表現になります。
多くの方が小学生の時にリコーダーを吹いたとこがあると思います。
リコーダーで音を変える時に穴の空いているところを指で塞いで演奏していましたよね?
あの穴こそが「トーンホール」なのです。
トーンホールは木管楽器と呼ばれる楽器には必ず空けられておりその形状はさまざま。
その形や大きさによって音程や音色が大きく変わります。
今回はサックスのトーンホールについて学んでいきましょう。
2_トーンホールの役割
フルートのトーンホール。先端がカーリングされているのもが多いです。 サックスのトーンホール。切りっぱなしのストレートタイプです。
トーンホールは元々は音程を変えるために管体に直接開けられていました。
ちなみに世界最初の管楽器(諸説ありますが)は白鳥の骨を使ったフルート(笛)だったと言われています。
骨に発生、もしくは意図的に開けた穴を歌口として鳴らしていたのでしょうね。
そこに横笛の様に指で押さえる穴を開けて儀式などの祭事ごとで演奏していたのです。
その仕組みは今の木管楽器でも生きています。
(一部、昔の金管楽器でもトーンホールのあるものはありましたが現在は製造されておりません。)
サックスのトーンホールはリコーダーと違いとても大きいです。
場所によってはクッキーやお煎餅ほどの大きさがあります。
こんな大きな穴を開けると直接指で押さえることができないのでタンポと呼ばれるパッドで塞ぎます。
3_サックスのトーンホールの違い
ストレートトーンホール ロールド(カーリング)トーンホール
サックスのトーンホールは2種類あります。
トーンホールの種類によってサウンドの傾向が大きく変わります。
また見た目にもわかりやすいので比べてみましょう。
・一般的なトーンホールの「ストレートトーンホール」
ストレートトーンホールはYAMAHAやSELMER、YANAGISAWAなどなど定番のメーカーに多く採用されて見かける機会も多いです。
サックスをされている方には目に馴染みがあると思います。
先端をカットし断面をヤスリで切削し平面を出しているので製作工程が少なく製造が容易です。
ストレートトーンホールサウンドの傾向は歯切れのいい華やかな響きが特徴的です。
雑味を極力減らしたクリアなサウンドが好きな方に向いている仕様です。
・先端をカーリングまたはロングを溶接したロールドトーンホール(ソルダード)
ヴィンテージのConnのサックス。カーリングトーンホールを採用。 カイルベルトのサックス。ソルダードスタイルのロールドトーンホール。
それに比べてロールドトーンホール(カーリングトーンホール、カウリングトーンホールとも言う)を採用しているメーカーは少数派です。
ロールドトーンホールはストレートトーンホールを製作した後に専用のマシーンでトーンホールの先端をカーリングさせたり、ストレートトーンホールの先端に平面を削り出したリングを溶接させたりして製作します。
そのためストレートトーンホールよりも製作工程が多かったり高い作業技術を求められる仕様になっているため現代のサックスメーカーではあまり製造されておりません。
そのため市場でも希少性がやや高くなっております。
ロールドトーンホールのサウンドの傾向はストレートトーンホールのそれとは真逆です。
タンポの接地面積が大きく増えるため確実にトーンホールを塞ぐことができ機密性が向上します。
そのおかげかマイルドで太く、しっかりとした馬力を持ったサウンドを楽しめます。
4_ロールドトーンホールのロマン
・元祖 ロールドトーンホール
ロールドトーンホールの歴史は長く遡ると1920年台前後まで遡ります。
ロールドトーンホールをサックスに初めて導入したのはC.G.Connでした。
その当時のConnはオーケストラシーンの管楽器を全部Conn製の楽器に置き換えたいと野心を持ち飛ぶ鳥落とす勢いでシェアを拡大していきました。時代背景的にはSWING JAZZの生演奏を聴きながらパーティーでダンスしていた頃です。ベニー・グッドマンやカウント・ベイシー、グレン・ミラーの楽団が活躍していた中でロールドトーンホールを採用したConnのサックスは多くのサックス奏者に愛されていました。
SWING JAZZが収束していった後もマンハッタンのJAZZクラブ、バードランドなどで名を親しめたサックスのレジェンド、チャーリー・パーカーやデクスター・ゴードンがロールドトーンホールを採用したConnのサックスを好んで演奏しました。
1930年代までConnはロールドトーンホールを採用したサックスを製造しそれ以降は製作の効率化の観点かサウンド施工の観点かは不明ですがストレートトーンホールを有するサックスの製作へシフトして行きました。
その背景もあってか現代のサックス奏者でも矢野紗織氏や碓井雅史氏、中島朱葉氏が好んでロールドトーンホールを採用していた時代のCONNのサックスを今も好んで愛用しています。
・現代のロールドトーンホール
現代ではConnが採用してきたロールドトーンホールの特許の期限が切れているためConnが作り上げてきた野太くファットなロールドトーンホールのサウンドを再現&進化させるべく製作技術に自信のあるサックスブランドがロールドトーンホールを採用したサックスの製作を行なっております。
その中でも長い歴史を持つドイツの高級ブランドJulius Keilwerth(ユリウス・カイルベルト)、高品質な台湾製サックスを世に広めたCadeson(カドソン)、現代のサックスの巨匠ボブ・ミンツァーの愛用ブランドAndorea Eastmanなどなどサックスにこだわりを持った多くのブランドがロールドトーンホールの歴史を受け継いでいます。
製作の開始から100年を超えて愛されているロールドトーンホール。
一見わかりにくいトーンホールの種類ですがとてもこだわりの深いディティールポイントです。
これからサックスを始めたい、新しく買いたいそんな方はトーンホールの違いも視野に入れて楽器選bの参考にしてみてください。
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ブラステック白山